後藤和智事務所OffLine サークルブログ

同人サークル「後藤和智事務所OffLine」のサークル情報に関するブログです。旧ブログはこちら。> http://ameblo.jp/kazutomogoto/

Jaccard係数による東方Project人気投票パートナー部門分析


この論考は「東方Project」の二次創作を兼ねています。登場人物の口調や性格などが原作と異なる可能性がありますのでご注意ください。

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図:多次元尺度構成法によるキャラクターの配置(条件は本文と同じ)

 

特設サイトを通じて第13回東方Project人気投票のパートナー部門の結果を見たんだ

そうしたら単純なポイント数だけでパートナーの強さを見られることが疑問に思えてな

Jaccard係数を計算しようと思ったんだよ

 

アリス・マーガトロイド(以下、アリス):……何これ。

霧雨魔理沙(以下、魔理沙):『東方鈴奈庵』における易者の台詞の改変だな。

アリス:いや、そうじゃなくてね。何よ、この企画は。

魔理沙:まあ先の改変の通りだ。「東方wiki」が主宰する第13回「東方Project人気投票」においては、この回から「ベストパートナー部門」が新設された。元々パートナーやカップリングに対する投票は、かつて「東方wiki」版の人気投票が行われなかった年で、ニコニコ動画上の東方Projectの二次創作祭りである「東方ニコ童祭」での人気投票、そして中国での東方人気投票で行われていたが、このたび本家でも行われるようになった。

アリス:結果を見てみると、まず霊夢魔理沙が圧倒的なポイントを集めて、続いて「秘封倶楽部」の2人、次に私と魔理沙、その次には咲夜とレミリアなどといった、原作や二次創作で有名なカップリングが高い得票を集める一方で、他方で下の方だと珍しいカップリングが意外な支持を集めてたりしてるわね。

魔理沙:ただ、単純な得票数だけではパートナーの「強さ」を測ることは難しいんじゃないかっていう考えも本稿の筆者の中にはあってな。例えば霊夢のパートナーの場合、私のほか、紫、早苗、文、萃香とかもあるし、今回また順位が大幅に上がった易者なんかも支持がある。他方で、例えばこいしのように、さとり、こころ、フランが圧倒的な支持を得ているが、それ以下はほとんど入っていないケースもあったりする。そのような状況下で、単純な得票数だけでパートナーの強さを測るのは限界がありそうだってのも分かるよな。

アリス:そこでJaccard係数を使うってわけね。Jaccard係数は2つの集合の共通度を測る指標だけど、どういう風に使うの?

魔理沙:元々Jaccard係数は、2つの集合における、積集合の要素の数を和集合の要素の数で除した値を用いる。この投票では、例えば私と霊夢の場合、私と霊夢のパートナーのポイント数を、私と霊夢のどちらかを含むパートナーの票数で割った値がJaccard係数となる。

霊夢魔理沙のJaccard係数 = 霊夢魔理沙のパートナーの得票数 / (霊夢を含むパートナーの票数 + 魔理沙を含むパートナーの票数 - 霊夢魔理沙のパートナーの得票数

魔理沙:この式を使えば、Jaccard係数はExcelで計算できる。少し前に本稿の筆者は「ソースファイルが重すぎてJaccard係数が計算できない」とかぬかしていたが、仕組みさえ分かれば計算は簡単だよな。

アリス:でも、ただ値を求めるだけだと分かりづらいんじゃない?

魔理沙:そこで、今回はKH Coderを使って、共起ネットワークを描くことによりつながりを見ていくことにしたい。集計も、MeCabをカスタマイズすればKH Coderで行うことが可能だ。今回は、下記の条件で、Jaccard係数を求めてみた。

分析対象とするパートナー:11ポイント以上(全体の結果で公表されているもの)

集計を行うキャラクター:個別でのポイントが30ポイント以上

1ポイントを1票とする。

 

魔理沙:集計の対象となったパートナーは別表の通り。グレーは30ポイントに満たなかったため集計対象外とした。これらのキャラクターにおける共起の強さを発表するぜ。

アリス:それでは、まずは1~30位です。

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アリス:最も強い30の組み合わせとはいえ、3つ以上繋がってるのがないわね。これらは「定番」を通り越して、「鉄板」と言える組み合わせかしら。

魔理沙:特にユキとマイ、及び「蓬莱人形」のジャケット娘とレーベル娘のJaccard係数は、理論上の最高値である1を記録している。これは、「蓬莱人形」の2人で考えると、ジャケット娘にはレーベル娘以外の、レーベル娘にはジャケット娘以外の組み合わせがないということだ。もちろん詳細な結果を見てみれば、ほかの組み合わせにも入っているが(例:ジャケット娘)、全て10ポイント以下(集計対象外)だ。これらの組み合わせは、アリスも言った通り、定番中の定番の組み合わせであり、二次創作でもよく見かけるものだな。

アリス:続いて、31位~60位を見てみましょう。

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アリス:このくらいまでが定番の組み合わせと言えるかしらね。3つとか4つとか繋がったところも見られるけど、まだまだ独立してる感じね。

魔理沙:一輪を中心とする組み合わせと、鈴仙を中心とする組み合わせで小さな島ができているほか、文・椛・はたての天狗組、光の三妖精、紅魔館メンバー、プリズムリバー姉妹などといった連環が少しずつ生まれてきているのがわかる。

アリス:61~90位は次の通りになっています。

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アリス:島のサイズがどんどん大きくなってきたわね。こいしちゃんの島とレミリアの島がフランを通じて繋がったり、ぬえを中心に命蓮寺組、小傘ちゃんの島、正邪の島とかが繋がったりと、どんどん巻き込んでく感じね。

魔理沙:とはいえ、まだまだ散発的な印象は否めないな。ここからどんどん繋がっていくぜ。というわけで、今度は91位~120位だ。ここからは、図が煩雑になるため、全ての共起を描いたものと、最小スパニングツリーだけを描いたものを併記する。

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・全ての組み合わせ

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・最小スパニングツリーのみ

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アリス:すごい!一気に繋がったわね。上位120個だけでもこんなに大きくなるのねぇ。

魔理沙:ここまで来ると、島と島の間をつなぐ存在が重要になってくるな。特に霊夢と早苗が繋がったことの影響が大きいと見られる。また細かいところではあるが、文-チルノ-レティ-幽香-魅魔のつながりが生まれたことによりいくつかの小島が結ばれたし、周辺の小島も、例えばルナチャイルドとルナサのつながりが生じたことで音楽組と三月精の島が合わさった。

アリス:それにしても、「抗鬱薬おじさん」-易者-ウワバミのつながりって…。まあいいわ。121位~150位はこのようなものになっています。

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・全て描画

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・最小スパニングツリーのみ

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アリス:ここまで来ると、周辺の島もいよいよ逃げ場がなくなるわね。三月精と音楽組の島は、サニーちゃんとクラウンピースちゃんのつながりを介して大きな島と繋がってしまったし、易者の島ですら、「抗鬱薬おじさん」と鈴仙ちゃんが繋がっちゃった。

魔理沙:Jaccard係数も0.02程度と低いし、これ以上つなげる必要はないとは思うが…、最後に151位~180位を公開しよう。こんな感じだ。

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・全て描画

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・最小スパニングツリーのみ

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魔理沙:最早大きな島は他とのつながりをほとんど持たず、島の中のネットワークを強化するだけになっちまったな。とはいえこれで分かるのは、東方のキャラクターの中には、島の中で複数のキャラクターを取り持っているような、例えば小傘やぬえ、幽香などのように多様な組み合わせがあるものと、ここまで広げてもなお島の袋小路にいるような美鈴やさとりなどといった特定の組み合わせが特に強い支持を得ているもの、そして秋姉妹や清蘭と鈴瑚などといった、ほとんど特定の組み合わせしかないものというように分かれるということだ。もっとも、描画する共起を210にすると、静葉とレティが繋がるんだが、それはどうでもいいよな。

アリス:今回は先行研究の参照はしなかったけど、例えば本稿の筆者が去年出した『東方キャラソート統計』だと、最大で10人名前を上げることができるから、これと若干違う図ができるわよね。ただ、ここでは好きな組み合わせを最大で5個選ぶことができるけど。

魔理沙:あと、ニコ童祭や中国版人気投票と比べてどうなっているかという比較もしなかったが、やってみると面白いかもしれないな。

アリス:今回の集計結果は、下記のGoogleドライブに公開しておりますので、是非ご参照ください。ここでは触れなかったキャラクター別の結果も記載しております。

東方パートナー投票統計表.xlsx - Google ドライブ

 

参考文献

樋口耕一『社会調査のための計量テキスト分析――内容分析の継承と発展を目指して』ナカニシヤ出版、2014年

後藤和智『東方キャラソート統計――多変量解析で見る「愛され方」の研究』後藤和智事務所OffLine、2016年

www.melonbooks.com

 

※集計に用いたキャラクター一覧(灰色は集計に用いていない)

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【新春テキストマイニング初め】イケダハヤトは消耗しているのか?

あけましておめテキストマイニングございます。本年も後藤和智事務所OffLineをよろしくお願いいたします。昨年はあまりテキストマイニングができず、東方の書き下ろし同人誌もあまりかけませんでしたが、2017年はもっと積極的に動いていくつもりです。よろしくお願いいたします。

さて、2017年初のテキストマイニングは、冬コミの評論新刊『間違いだらけの論客選び』でも採り上げた論客、イケダハヤトについて採り上げることとします。というのも、昨年、イケダはホメオパシーを好意的に採り上げたことでネット上で話題になりました。ブログ時代、そして2012年に出版され、『間違いだらけの~』や2014年に書いた『「新しい生き方」は誰のため?』(総集編『「働き方」と「生き方」を問う:〈若者〉をめぐる言説の現在と計量分析――平成日本若者論史Special3』(後藤和智事務所OffLine、2015年)に収録)でも採り上げた『年収150万円で僕らは自由に生きていく』(星海社新書、2012年)以降、若い世代として社会の常識や通念に挑発的に斬り込んでいくというスタイルを保ち、のちに東京を離れて高知に移住してからは、東京で主にサラリーマンとして生きている人たちを挑発していくことで話題になりました。

イケダとホメオパシーの関係については下記の記事がよくまとまっています。

hagex.hatenadiary.jp

 

interdisciplinary.hateblo.jp

これが話題になっていたので、私も俗流若者論専用の書庫の奥底からイケダの著書『まだ東京で消耗してるの?』(幻冬舎新書、2016年)を引きずり出して読んだのですが、通読した感想は、どうも「~ですよ。」「~(し)ますよ。」という表現が目立つということです。ここまで自分を必死に売り込んでいても、言っているのは自分が「これから凄いことをやる」という主張(悪く言えば妄想、夢想)だけで、その社会的なインパクトなどについては主張が薄い気がしました。今までのいくつかの著書で見られた社会的ビジョンなどのようなものは捨て去られてしまった印象を受けます。

それだけではありません。私がイケダという”論客”に対して根本的な疑念を持つようになったのは、次のようなLINEスタンプを売っていることを知ったからです。

store.line.me

 

 

これを見ると、イケダは最早言論の中身ではなく「キャラ」で売っているとしか思えません。言説の科学性や実現性を重視する論客というのは、最早過去のものなのか――。イケダのような〈若手論客〉を見ていると、そのような印象を受けます(だからこそ『間違いだらけの~』を書いたのですが)。

※私の『まだ東京で~』の感想はこちら。

 

 

 

 

さて、新春テキストマイニング初めは、このイケダについて分析してみたいと思います(当初の予定では、柳美里『仮面の国』を検証しようと思っていたのですが、これは後にとっておきます)。分析する書籍は、2012年に刊行された『年収150万円で~』(以下、『年収』)と、2014年の『なぜ僕は「炎上」を恐れないのか』(光文社新書、2014年。以下『炎上』)、そして2016年の『まだ東京で~』(以下『消耗』)です。いずれも新書であり、また刊行時期がちょうど2年おきになっているので、イケダという論客の変遷を追っていく上ではいいセレクションかと思います。

まず各書籍のプロフィールを示す前に、文章表現を集計してみます。RMeCabでN-gramを集計した後、代表的な文末表現についてコーディングを作成し集計してみました(書籍は全て敬体で書かれている)。

# 文末
*「~(して)います。」
'ています。'
*「~(して)しまいます。」
'てしまいます。'
*「~と思います。」
'と思います。'
*「~考えています。」
'考えています。'
*「~できます。」
'できます。'
*「~のです。」
'のです。'
*「~いました。」
'いました。'
*「~なりました。」
'なりました。'
*「~(して)きました。」
'てきました。'
*「~でしょうか。」
'でしょうか。' | 'でしょうか?'
*「~(して)ください。」
'てください。'
*「~でしょう。」
'でしょう。'
*「~しましょう。」
'ましょう。'
*「~ですよ。」「~ますよ。」
'すよ。'
*「~ません。」
'ません。'

これを集計した結果が次の通りです。
表1

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図1

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集計結果を見ると、『年収』『炎上』では、「~のです。」「~でしょう。」が高かったのに対し、『消耗』では、私の読みの通り「~ですよ。」「~ますよ。」が圧倒的に多くなっています(特に『年収』では1回も使われていなかった)。ここからも、イケダにおける言説が、『消耗』では「自分がどんなことができるか」「自分が何をやっているのか」ということを主張することがメインになっていることが見受けられます。

さて、本格的な分析に入っていきましょう。まず、書籍のプロフィールと、対応分析による単語のプロットを示します。対応分析には、占有率が20%となるような自立語である、出現数18以上の自立語を使っています。

表2

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図2

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今回は、多次元尺度構成法を用いて、単語をカテゴライズしてみました。用いた単語は上位100単語に近い、出現数58以上の103単語です。この単語を5つのクラスターに分けてみます。集計基準は段落としました。

図3

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ここから、単語を下記の5カテゴリーに分けました。

表3

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集計結果は下記の通りです。

表4

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図4

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カテゴリー1については、集計結果でおしなべて高いので、敢えて意味をつける必要はないだろうと思い意味は「なし」としております。それ以外の単語を見てみると、カテゴリー2は『年収』で高く、カテゴリー3,4は『年収』と『炎上』で、そしてカテゴリー5は『消耗』がそれぞれ使用率が高くなっています。カテゴリー3,4については、イケダにとってブログが社会とつながり、そして自分の考えを発信する手段「であった」ことを考えれば、『年収』や『炎上』では使用率が高いということはわかります。

しかしそのイケダの論客としての特徴もしくは特殊性を、『消耗』ではかなぐり捨ててしまって、逆にパーソナルな記述が急増してしまっていると言えます。文末表現も含めて、イケダの関心が社会から自分に向かっているのは、ひたすら自分を虚飾しなければ論客としてやっていけなくなったということなのでしょうか(それこそ前述のLINEスタンプなども含めて)。

だとすれば、これはイケダと我が国の言論メディア双方にとっての危機だと思います。まずイケダに関しては、ただ「若さ」、もう少し言えば「ブログ世代としての特殊性」以外になにも持つものがないということです。『「新しい生き方」は誰のため?』では、最近の論客は、「働き方」と「生き方」の2つを書いてしまうと、もう論客としてネタ切れになってしまい、後が続かなくなるということを書きましたが(本稿で分析した書籍だと、『年収』が働き方、『炎上』が生き方ということになる)、少なくともイケダについてはその予感が当たってしまったとしか言えません。

そして出版側の問題として、このような中身がなく、ただかつて「若者代表」のひとりとしてもてはやされた論客が、自分を虚飾するだけの文章が売り出されてしまうということです。イケダが『消耗』を出したという事実は、我が国の言論が「キャラ」に支配されていることの一端を示しているということです。2017年は、1990年代終わり~2000年代の劣化言説の時代の解明と共に、このような「キャラ」化した言論、論壇の現状についても、テキストマイニングを用いて斬り込んでいこうと思います。

※イケダも登場する冬コミ評論新刊、現在メロンブックスCOMIC ZINにて委託中です。

kazugoto.hatenablog.com

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COMIC ZIN 通信販売/商品詳細 間違いだらけの論客選び――2010年代「日本社会論」の計量テキスト分析

『年収』の共起ネットワーク

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『炎上』の共起ネットワーク

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『消耗』の共起ネットワーク

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付録1

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付録2

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【リリース】後藤和智事務所OffLine コミックマーケット91参加情報(速報版)

コミックマーケット91

東京ビッグサイト

後藤和智事務所OffLine

1日目(12月29日)

東館「ム」ブロック57a

Webカタログ:

https://webcatalog.circle.ms/Circle/13000551/

【お品書き】第1版

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(もしかしたら『「劣化言説の時代」のメディアと論客』が加わるかもしれません…)

【当日のオペレーション】

夏コミ(C90)に引き続き、今回も、当日に仙台で夜勤が控えているため、サークル主本人が頒布できるのは午前中のみとなります。当日は下記のようなオペレーションを取ります。

開場~12:00 サークル主(後藤)による頒布・対応

12:00~12:30 サークル主撤収、売り子への引き継ぎ作業

12:30~終了 売り子による頒布・対応

売り子は、サークル「清次郎出版」の清次郎様と、もう一人が交替で担当します。

【主要同人誌情報】

新刊『間違いだらけの論客選び――2010年代「日本社会論」の計量テキスト分析』

kazugoto.hatenablog.com

例大祭3新刊『比那名居天子地獄組帝王学?――市民のための公共政策論の基礎』

kazugoto.hatenablog.com

例大祭3新刊『幻想郷市民大学2――経済と福祉の数学』

kazugoto.hatenablog.com

C90既刊『Text Mining Maniax――フリーソフトで始める日本語計量テキスト分析』

kazugoto.hatenablog.com

C90既刊『艦娘たちの書斎――「艦これ」文学統計解析論序説』

kazugoto.hatenablog.com

【C91新刊】間違いだらけの論客選び――2010年代「日本社会論」の計量テキスト分析

【書誌データ】
 書名:間違いだらけの論客選び――2010年代「日本社会論」の計量テキスト分析
 発行日:2016(平成28)年12月29日(コミックマーケット91)
 著者:後藤和智後藤和智事務所OffLine http://www45.atwiki.jp/kazugoto/
 サイズ:A5
 ページ数:120ページ
 価格:即売会…800円/書店委託…1,000円(税抜)
 通販取扱:メロンブックス https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=194682
   COMIC ZIN http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=30821
 国立国会図書館登録情報:納本予定
 電子書籍Kindle

 


 サンプル:

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【目次】
第1部 分析手法と全体像
 1. はじめに
 2. 分析対象と手法
 3. 対応分析
 4. 多次元尺度構成法による単語の分類と使用頻度

第2部 間違いだらけの論客選び

 

【分析対象書籍】
赤坂真理『愛と暴力の戦後とその後』
ブレイディみかこ『This is Japan』
ちきりん『自分のアタマで考えよう』
古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』
古谷経衡『左翼も右翼もウソばかり』
原田曜平『ヤンキー経済』
橋本治『バカになったか、日本人』
速水健朗『1995年』
平田オリザ『下り坂をそろそろと下る』
堀有伸『日本的ナルシシズムの罪』
堀井憲一郎『やさしさをまとった殲滅の時代』
百田尚樹『大放言』
イケダハヤト『年収150万で僕らは自由に生きていく』
加藤典洋『戦後入門』
香山リカ『劣化する日本人』
熊代亨『ロスジェネ心理学』
三浦展『第四の消費』
宮台真司『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』
藻谷浩介『里山資本主義』
村上裕一『ネトウヨ化する日本』
中川淳一郎『バカざんまい』
小熊英二『社会を変えるには』
奥田愛基『変える』
佐伯啓思『日本の宿命』
税所篤快『ゆとり世代愛国心
斎藤環『世界が土曜の夜の夢なら』
佐々木俊尚『21世紀の自由論』
白井聡『永続敗戦論』
想田和弘『熱狂なきファシズム
鈴木謙介『ウェブ社会のゆくえ』
橘玲『(日本人)』
高橋源一郎『ぼくらの民主主義なんだぜ』
武田砂鉄『紋切型社会』
竹田恒泰『日本人はいつから日本が好きになったのか』
谷本真由美『日本が世界一「貧しい」国である件について』
宇野常寛『リトル・ピープルの時代』
和田秀樹『この国の冷たさの正体』
渡部昇一『決定版 日本人論』
山崎雅弘『戦前回帰』
那覇潤『中国化する日本』

【ツイート転載】三浦展氏がやるべきこと(2016.11.21)

 三浦展『第四の消費』(朝日新書、2012年)。内容としては消費社会の歴史を振り返りつつ、いまの若者の消費スタイルを新しい消費の形として肯定、礼讃する俗流若者擁護論に至る本なんだけど、はっきり言ってやることが違うだろう。三浦がやらなければいけないのは、2000年代半ばの自身の言説を省察し、その時の若者論が消費社会のイメージ形成にどのように作用したかということだ。実際この本では三浦が売り出すきっかけとなった『ファスト風土化する日本』や『下流社会』、そして関連する若者論についてはデータとかで軽く触れられている程度で、というか消費社会の歴史に関してすら90年代が終わったらすぐ東日本大震災に飛ぶというもの。2000年代の「格差社会」論についても、1970・80年代にその萌芽が見られていたと述べる程度で、2000年代についてはかなりはしょられている。しかし三浦は2000年代はその時代の若者論の、トップランナーと言って差し支えない人物ではなかったのか。実際その後の「ヤンキー」論などにも三浦の言説は明らかに影響を与えているわけだから。

 ただ私は謝罪とかを求めているわけではないんです。というのも、三浦は『下流社会』で売り出していた当時、自分はマーケッターだからマーケティングとして予測しているのであり、バッシングを煽るような書き方をしている、ということを各所で認めていた。つまり三浦は当時、若者叩きが「売れる」ということを知っていて、その上でやっていた。その点を認めているという点では、ただ若い世代が憎いとか、不安を投影しているだけのような憂国ライターとは一線を画す。それ故、ある意味三浦こそが当時の若者論を総括できる、かなり重要な人材と言うことができる。

 いまはシェアエコノミーとかの擁護、礼讃に熱を上げている三浦だけど、そのうちかつての自分の言説と向き合わざるを得ないときが来るかもしれない。その日を待たずにはいられないのである。

【ツイート転載】『プレジデント』の生活保護バッシングを批判する(2016.10.24)

 

 

president.jp

 

まず、この記事のタイトルには「ドキュメント」と書いていますが、まずはこの記事を最後までお読みください。驚くべきことが書いてあります。

《本稿はすべてフィクションです》

 

フィクションならば、なぜ「ドキュメント」などというタイトルをつけたのでしょうか。言っておきますが、私は捏造などしていません。本当にそう書いてあります。

で、記事の問題ですけど、自営業で細々とやってきが60歳の男性が、60歳を「定年」にして、ありったけの財産を使い果たして生活保護を受けて楽しようという記事。なぜこういうケースを選んだのか。てかあるの?

記事はその男性が有り金や財産を豪遊して使い果たし、兄弟にも無理な注文をして福祉事務所の職員にさも自分が財産も身よりもないかのように説明するという内容。仮にこれがフィクションであるという最後の物言いを受け入れているならば、『プレジデント』編集部が生活保護受給者をそういう風に捉えていると考えてもおかしくない。

そもそもこの記事には生活保護受給者に関する統計が出てきていないし、こういうケースがあり得るのかどうか、福祉事務所の職員さんやソーシャルワーカーの方に取材した形跡も、多分ないでしょう。参考文献もありません。

最後の物言いによって、さもこういう風な「贅沢」な生活保護受給者が福祉政策を、ひいては我が国の財政を歪めていると主張するというものです。

編集部、もしくは書き手の大高志帆なる人物は「小説」ということで逃げるつもりでしょうが、そういう検証から逃れるものではないと思いますが。東方総集編2巻にも書きましたけど、生活保護の「不正受給」とされているものの多くは収入の申告忘れです。また我が国の生活保護は自立支援という制度的背景も持っている。『プレジデント』の読者はこういう偏見まみれの記事で騙すことができるとでも思っているんでしょうか。

しかし「フィクション」「小説」と言えばいかなる偏見を表出しても許されると考えるなんて、文学も舐められたものですね。この記事は間違いなく同誌にとって歴史的汚点になるでしょう。てかなってくれ。

 

【秋季例大祭3新刊】比那名居天子と地獄組の帝王学?――市民のための公共政策論の基礎

【書誌データ】
 書名:比那名居天子地獄組帝王学?――市民のための公共政策論の基礎
 発行日:2016(平成28)年10月16日(第3回博麗神社秋季例大祭
 著者:後藤和智後藤和智事務所OffLine http://www45.atwiki.jp/kazugoto/
 表紙:ベル助(ベルの巣 http://www.pixiv.net/member.php?id=3663553
 サイズ:A5
 ページ数:56ページ
 価格:即売会…800円/書店委託…1,000円(税抜)
 通販取扱:メロンブックス https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=186992
   とらのあな http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/46/81/040030468110.html
 国立国会図書館登録情報:納本予定
 電子書籍メロンブックスDL

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 備考:本書は同人サークル「上海アリス幻樂団」の作品「東方Project」シリーズの二次創作作品となります。そのためコミティアなどの二次創作作品の頒布が禁止されている即売会では頒布いたしません。
 登場人物:比那名居天子古明地さとり、ヘカーティア・ラピスラズリ霧雨魔理沙永江衣玖

 

【お詫び】
 筆者の編集ミスで、下記の謝辞が抜けておりました。ここで採り上げた皆様に謹んでお詫び申し上げます。

 本書の表紙イラストは、サークル「ベルの巣」のベル助氏に担当していただきました。私が氏の作品を知ったのはニコニコ動画上での四コマ漫画で、近年では同人誌にも進出されています。2016年5月の例大祭で、サークル「虹の戦士」様が発行されていた熊本地震復興合同誌『東方西海道応援合同誌』に寄稿されており、また氏がさとりの妹であるこいしとヘカーティアを絡ませた作品を投稿していたのも知っていたので、これも縁と思い依頼しました。


 また、本書の執筆中に、ツイッターなどで多大なる示唆をいただいた、サークル「幻想郷交通公社」の嘉島安次郎氏にも、この場を借りてお礼申し上げます。氏の社会活動の実体験に基づく発言は、理論志向の私も学ばなければならないと思ったことが多くあり、その学びは本書にも活かされているつもりです。

 

【目次】
はじめに
第1章 政策のデザイン
 1・1 なぜ公共政策論が必要なのか
 1・2 公共政策論のアプローチ
 1・3 改めて、公共政策とは何か
 1・4 政策デザインのプロセス
 1・5 市民に期待される政策リテラシー

第2章 政策をいかに決定するか
 2・1 合理的な意思決定とは
 2・2 政策決定と費用
 2・3 政策決定と制度・理念
 2・4 意志決定の実際

第3章 政策をいかに実行するか
 3・1 行政とは何か
 3・2 ガバナンス
 3・3 人事のマネジメント
 3・4 政策の評価

おわりに
 参考文献
 おわりに
 あとがき