後藤和智事務所OffLine サークルブログ

同人サークル「後藤和智事務所OffLine」のサークル情報に関するブログです。旧ブログはこちら。> http://ameblo.jp/kazutomogoto/

【文学フリマ東京22新刊】「働き方」と「生き方」を問う――平成日本若者論史Special3

 【書誌データ】
 書名:「働き方」と「生き方」を問う:〈若者〉をめぐる言説の現在と計量分析――平成日本若者論史Special3
 発行日:2016(平成28)年5月1日(第21回文学フリマ東京)
 著者:後藤和智後藤和智事務所OffLine http://www45.atwiki.jp/kazugoto/
 表紙:川泉ポメ(Penny Lane http://kawaizumipome.lolipop.jp/
 サイズ:A5
 ページ数:120ページ
 価格:即売会…800円 委託…1,000円

 通販取扱:とらのあな http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/40/45/040030404538.html
  COMIC ZIN(予定)

 国立国会図書館登録情報:納本予定
 電子書籍:予定なし

 サンプル:pixiv

www.pixiv.net

【目次】

総集編版まえがき

第1部 「働き方」を変えれば幸せになれる?
 第1章 まえがき  兼 本書の問題意識
 第2章 「海外に出よ」系の言説を読む――田村耕太郎と谷本真由美を中心に
  2.1 はじめに
  2.2 「グローバル」を演出するための「アイドル」
  2.3 「ブラック企業」の経営者はなぜ若者論を語るのか
  2.4 まとめ――ニヒリズムの帝国
 第3章 「降りる生き方」の罠――「新しい時代の正義」の何が危ういのか
  3.1 はじめに
  3.2 現代の「降りる」生き方の流れ
  3.3 現代の若者論との関係性
  3.4 まとめ――グローバル化と「降りる」生き方の間で
 第4章 若者の「新しい幸せ」の虚妄――古市憲寿試論
  4.1 はじめに
  4.2 「豊かさの中の欠乏」から「欠乏の中の豊かさ」、あるいは「リアル」から「ニヒル」
  4.3 現代の若者論の「完成形」としての古市憲寿
  4.4 まとめ――中間の喪失
 第5章 まとめ――デフレ時代のカーニバル
  5.1 「僕たち」とは誰か
  5.2 まずはマクロ経済の重要性を認識せよ
 第6章 「U-25サバイバルマニュアル」が描く「新・仕事人間」――その病理と時代背景
  6.1 ラインナップと著者
  6.2 社会を変えるな、自分を変えろ?
  6.3 若者論壇・政府・財界合作の「新・仕事人間」

第2部 「新しい生き方」は誰のため?:統計学から見た若者論・若者向け自己啓発言説の現在
 第7章 はじめに
 第8章 個別論者の分析
 8.1 はじめに
 8.2 古市憲寿
 8.3 イケダハヤト
 8.4 ちきりん
 8.5 谷本真由美
 第9章 横断的な分析
  9.1 はじめに
  9.2 「働き方」関係書籍の分析
  9.3 「生き方」関係書籍の分析
  9.4 分析対象書籍全体の横断的な分析

第3部 「ヤンキー」論の奇妙な位相
 第10章 はじめに
 第11章 「ヤンキー」論の布置
  11.1 はじめに
  11.2 現在の「ヤンキー」論への批判
  11.3 現在の「ヤンキー」論の形成と差別の再生産
  11.4 内向きの論理
  11.5 おわりに――「批評」の病理をどう見るか
 第12章 統計学で解き明かす「ヤンキー」論
  12.1 はじめに
  12.2 「ヤンキー」論4冊の個別検証
   12.2.1 斎藤環『世界が土曜の夜の夢なら』
   12.2.2 斎藤環『ヤンキー化する日本』
   12.2.3 原田曜平『ヤンキー経済』
   12.2.4 速水健朗ケータイ小説的。』
  12.3 「ヤンキー」論4冊全体の検証
  12.4 対応分析による9冊の特徴の分析

第4部 サークルペーパーより
 第13章 東浩紀と「批評」市場の問題(おでかけライブ in 山形111)
 第14章 君にもなれる!「グローバル」論客(第9回東方紅楼夢
 第15章 古市憲寿は「艦これ」の提督になったらどうだろうか?(地底の読心裁判 上告)
 第16章 「若者の右傾化」論と現代若者論の位相(海ゆかば2)
 第17章 「悪意」を生み出すものは何か:森達也クラウド増殖する悪意』を批判する(第8回東方名華祭/幻想郷フォーラム2014)
 第18章 オタク論者やマーケティング論者に社会を語らせてはいけないこれだけの理由(第11回博麗神社例大祭
 第19章 「夢ビジョン2020」を批判する:その危険な思想と成立(SUPER ADVENTURES 72)

【名華祭10/幻想郷フォーラム2016新刊】東方キャラソート統計――多変量解析で見る「愛され方」の研究

【書誌データ】
 書名:東方キャラソート統計――多変量解析で見る「愛され方」の研究
 発行日:2016(平成28)年3月13日(第10回東方名華祭/幻想郷フォーラム2016)
 著者:後藤和智後藤和智事務所OffLine http://www45.atwiki.jp/kazugoto/
 表紙:ふみつき(踏月 http://fumituki310.blog.fc2.com/

 サイズ:A5
 ページ数:60ページ
 価格:即売会…800円、書店…1,000円(税抜)
 通販取扱:メロンブックス https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=155372
  とらのあな http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/39/48/040030394823.html

 国立国会図書館登録情報:納本予定
 電子書籍メロンブックスDL

www.melonbooks.com


 サンプル:

www.pixiv.net



 備考:本書は同人サークル「上海アリス幻樂団」の作品「東方Project」シリーズの二次創作作品となります。そのためコミティアなどの二次創作作品の頒布が禁止されている即売会では頒布いたしません。
 登場人物:小悪魔、霧雨魔理沙アリス・マーガトロイドパチュリー・ノーレッジ

 【目次】

はじめに
第1章 データの特徴と単純集計
 1.1 はじめに/データの特徴
 1.2 単純集計・相関係数

第2章 多変量解析
 2.1 はじめに
 2.2 因子分析
 2.3 決定木分析

第3章 KH Coderを用いた分析
 3.1 はじめに、分析手法、単純集計
 3.2 共起ネットワーク
 3.3 クラスター分析と対応分析
 3.4 自己組織化マップ

あとがき

【テキストマイニング】ほぼ週刊若者論テキストマイニング 第10回:深澤真紀『草食男子世代』

転載元:

ch.nicovideo.jp

(第9回は欠番とします)

2016年、明けましておめでとうございます。今年も私及び弊サークル「後藤和智事務所OffLine」をよろしくお願いいたします。

…はい、2015年はこの連載どころか、ニコニコチャンネルも1回も更新しませんでした!2014年年末にはテキストマイニング方面を強化していく方針でいたのですが、昨年出せたテキストマイニングの同人誌は『世代論メディアを解体する』(現在COMIC ZINにて委託中です。詳しくは告知欄で)だけという体たらくでした。正直に述べると、まず第9回で分析しようとした書籍の結果があまりにもビビッドすぎて実りのないものであったことと、2014年末から精神的に参っていて2015年春まで引きずってしまっていたこと、そして2015年春から私事で忙しくなってしまったこと(それでも即売会への参加や同人誌の製作は続けましたが)などから、こちらの更新が止まってしまいました。久しぶりにテキストマイニングをやろうとして『世代論メディアを解体する』を書くときに、KH Coderの使い方をほとんど忘れてしまっていたのは衝撃的でした。

本年からは、できる限りこちらの連載も続けていこうかと思います。「ほぼ週刊」とありますが、だいたい隔週~5週3回くらい(週0.5~0.6回くらい)のペースで更新していければと思います。

さて、本年の新春初分析の儀は(というかこの文章も本来であれば1月1日に書き上げるつもりでした)、2006~2007年に日経BP社のウェブサイトで連載され、「草食(系)男子」という言葉の火付け役となった書籍『平成男子図鑑――リスペクト男子としらふ男子』(日経BP社、2007年)、その文庫化である、深澤真紀『草食男子世代―平成男子図鑑』(光文社知恵の森文庫、2009年)です。この本については、かつて私は「bk1」の書評(現在は「honto」に掲載されています)で次のように書きました。

―――――

 俗流若者論スタディーズVol.7 ~なるほど、これは確かに「平成男子」図鑑だ~

はっきり言おう。本書は、「平成男子」なる1種類の男子しか示されていない。


え、何でそうなるの?と驚かれる方もいるかもしれない。しかし、あたしにしてみれば、これこそが本書の本質なんだ。


なるほど、確かに本書にはたくさんの「男子」が提示されているね。目次だけ見ても、「リスペクト男子」「オカン男子」「草食男子」「ツンデレ男子」(おいおい…)などなど、瞠目しちゃいそうだ。


あたしが先ほどのように判断した理由は、以下の二点。第一に、各種「男子」の「生態」(笑)についての描写。曰く、それぞれの「男子」には共通点があり、それは上の世代ほどにこだわらない、ということや、コミュニケーションに淡白であることなど。第二に、こんな「男子」が生まれた背景についての描写だが、まあ見てくれ。


「10代でバブルがはじけて、経済的に自立ができなくなり、地元に残るようになった」(「リスペクト男子」p.13要約)、《団塊の世代には「ニューファミリー」や「友達親子」という言葉がありましたが、これはまさにオカン男子の産まれた背景といえるでしょう》(「オカン男子」p.61)、《チェック男子が生まれた背景には、そもそも情報やソースに飢えていないと言うことに尽きる》(「チェック男子」p.96)


このような記述を見るたび、あたしはあまりの既視感にしばし笑い転げてしまった。まあ、代表的なのを提示しても、こんなもん。要するに、さんざん語りつくされた世代論をまたぞろ蒸し返しているに過ぎないのさ。しかもこの著者、おもしろいことに、どこが各種「男子」の分かれ目になるか、ということについては全く提示していない。だからこんな「分析」が成り立ってしまう。曰く、「mixi男子はリスペクト男子でもある」「少年ジャンプ男子はリセット男子でもある」と。特に後者については、何兆歩譲っても理解できなかった。


要するにこういうことだ。著者にとって、著者が観察の対象にしている「男子」は、それが何「男子」であるかは本質的な問題ではない。つまり、先ほど述べた、何事にも対してそれほどの関心を持たず、他方では自分の半径数メートルのことには極めて関心が高く、コミュニケーションは淡白である、そんな「平成男子」の急増こそが、本書で問題にされていることだ。そう考えれば、本書にちりばめられた既視感にも説明が付く。そんな「男子」って本当に増えたの?という(少なくとも、社会学的には極めて重要な)疑問は二の次だが。


従って本書は、「今時の若者が理解できない!」と憤慨している人が読んで溜飲を下げる、という類のものであり、それ以上でもそれ以下でもない。だが、あたしが本書を読んで、笑えるけど笑えないのは、本書のような笑いの種でしかない議論ばかりではなく、(少なくとも論者と版元は)「真剣」に若年層の「格差」について語っている本にも、本書とほぼ同類のメンタリティが流れていることだ。要するに、若年層においては小さい頃から経済的に満たされており、その「格差」とは所詮は小さな「差異」みたいなものに過ぎない、ということ。こういう認識こそ、あたしらが壊さなければならないものだし、また「格差」論を「貧困」論に昇華させることを阻んでいるものなんだけど。
http://honto.jp/netstore/pd-book_02798914.html

 



―――――

今回の分析のために本書を再読したのですが、基本的な感想としてはこれと変わっていません。ただ一点強調していないのは、本書を読むと、決して若い世代を叩いているか擁護しているかというのは「本質的な問題ではない」ということです。本書は、どちらかと言えば若い世代を擁護しています(これは2010年代の若者論に概ねよく見られる傾向です)。しかし同書で用いられているロジックとは、基本的に1990年代~2000年代の若年層叩きで使われていたロジックをただ単にネガティブからポジティブに転換してものに過ぎず、むしろ既存の劣化言説を当然の如く底にしているという点でより悪質と言えます。

文中で繰り返される「男子は~」、そして「おやじ(世代)は~」という物言いにも、客観的な根拠はまったくありません。ただただ使い古されてきた偏見を繰り返しているだけです。今回再読したときにも、私は何回も「その根拠はどこだ!」と突っ込んでいます。このように、若者論というものにおいては、偏見を疑うよりも、再生産することの方が受けるのでしょう。このような傾向は若者叩き、擁護問わず頻繁に見られます。このような「偏見の再生産」こそが、若者論の最大の問題点だということを、もっと知ってほしいと思います。

さてここからは分析に入っていきましょう。形態素解析ソフトには「MeCab」を使い、また分析には「KH Coder」を使いました。これは今までと同様です。ただ辞書については、今までは前回からの辞書に継ぎ足す手法をとっておりましたが、今回からはいったんリセットし、毎回作成する方針としました。なお、今回登録した単語は「ガンダム」「mixi」のみです。そのうち分析に使用する単語は、全体の占有率が15%となる、出現数23以上の単語158語を使用することとしました(名詞の分類がいろいろとおかしいところがありますが、それは仕様なのでご了承ください)。

表1 使用する単語と出現数

f:id:kgotolibrary:20160107200422j:plain



まずは多次元尺度構成法を用いて、単語を分類してみます。ただ対象の単語158語全部だと結果が見えづらくなるので、名詞に限定して分析を行いました(集計基準は段落、数値はJaccard係数)。

図1 単語の多次元尺度構成法

f:id:kgotolibrary:20160107200442p:plain



「男子」などの世代論に関する単語は左の方に配置されていますが、その対となるものは何になるのかというといまいち特徴がつかめません。縦軸でもどのような特徴があるのか、よくわかりませんでした。

さて本書の最大の特徴(そして最大の突っ込みどころ)ですが、最近の若い男性をいくつかの「〇〇男子」に分類して(ついでに言うとこの手の分類手法は近年のマーケティング系若者論の走りと言ってもいいでしょう)いますが、本書では対応分析を用いてその特徴を布置していきます。

表2 寄与率

f:id:kgotolibrary:20160107200526j:plain



表3 節(「~男子」)ごとの得点(第5主成分まで)

f:id:kgotolibrary:20160107200550j:plain



表4 単語ごとの得点(第5主成分まで)

f:id:kgotolibrary:20160107200614j:plain


ここでは、単語の得点を見ることによって深澤のラベリングの特徴を見ていくことにしましょう。まず第1主成分ですが、正の方向の得点が大きいのは「少年ジャンプ」「連載」「ガンダム」などといった漫画・アニメ作品に関する単語で、逆に負の方向の傾向が強いのは「パパ」「地元」「教育」といった生育環境に関する単語となりました。第2主成分は、マイナスの方向は第1主成分とあまり変わらないのですが(ただ「ガンダム」などがこちらではマイナスになっている)、プラスの方向に大きいのは「チェック」「日記」「mixi」といったメディアに関するものが多く見られております。このあたりは現在の青少年言説に支配的になっている思い込み(ステレオタイプ)が如実に表れていると言うことができそうです。第3主成分はよくわかりませんでした…。

表5 参考:節ごとの関連語(段落ごとのJaccard係数、集計対象は全自立語)

f:id:kgotolibrary:20160107200631j:plain



もう一つ分析を行ってみます。本書では「男子は~」「彼らは~」という物言いが頻出しますが、それにどのような単語が関連づけられているかを、共起ネットワークを用いて示してみます。その結果がこちらになります。

図2 「男子」の関連語(集計単位は段落、集計対象は全自立語、Jaccard係数上位60)

f:id:kgotolibrary:20160107200648p:plain



図3 「彼ら」の関連語(同上)

f:id:kgotolibrary:20160107200704p:plain



最後になりますが、これは多くの若者論で見られる表現であり、本書もまた例外ではないのですが、「~かもしれない」という推測に基づく分析を行っているとされる文末表現が頻出しておりました。試しにコーディングを用いて(コーディング「かも+しれる」)集計したところ、段落単位で4.58%、小見出し単位(なお、この小見出しには本書では分析しなかった、倉田真由美及び大宮冬洋との対談も含まれる)ではなんと33.80%で使用されていました。これが高い値なのかどうかは他と比較していないため何とも言えませんが…。


参考文献
樋口耕一『社会調査のための計量テキスト分析――内容分析の継承と発展をめざして』ナカニシヤ出版、2014年

【ツイート転載】ある社会学者と、若者論の社会学についての覚書(H27.12.27)

そもそも疑問なのは、若者論批判に対しては「若者論批判は若者の問題点を覆い隠す」という反批判がなぜか見られるということである。例えば女性、在日外国 人、生活保護受給者に対するバッシングは数多くあるが、それに対する批判も多い。私はそのような批判の多くを支持している。それに対して、私はそれらの批判が在日外国人や生活保護受給者の問題点を覆い隠している、という反批判は寡聞にして聞かない。当たり前だ。

だからこそ私が 甲山某に一番はじめに問うたのは「その私への誹謗の「若者」を「女性」「在日外国人」「生活保護受給者」に置き換えてみろ」だった。

これに対して、甲山は自らの〈実務家〉性を笠に着て、自らの差別的な視線からひたすら逃げ続けた。ここに見られるのは、若い世代における「格差」の存在(広がり、ではない)についてその被害を受けているのは自分だという立場だ。

togetter.com

階層化している、ないし階層化した若者たちは加害者であって、自らは被害者だ、という言説は、香山リカ『ぷちナショナリズム症候群』(最近ちくま新書から再版された)や荷宮和子『若者はなぜ怒らなくなったのか』などに見られる認識である。甲山の認識は、そのような認識を未だに引きずっているということである(他にこのような認識を持っている人として、かつての三浦展内田樹などが挙げられる)。

これは右派が1990年代から行っている若い世代に対するスティグマ化とはまた違った形で若い世代にスティグマを付与してきた。そのような、主に左派によるスティグマ化を支持する人たちは、それを批判する側もまた加害者であるという批判を行ってきた。2013年の段階ですら、このようなエントリーが書かれている。

brighthelmer.hatenablog.com

これは、2000年代における若い世代を研究する社会学の少なくない部分が、現代の若い世代が今までの世代とは「違う」ことを所与の問題として、公共政策的な視点ではなく、社会防衛的な視点から、そのような若い世代の「変化」に対して社会はいかに向き合うかという視点で行われている。これは、宮台真司香山リカなどといった若者バッシングに親和的な言説はもとより、浅野智彦氏や中西新太郎氏などといった学術的な研 究者においても無視できないレベルで見られるものである。

それに対して若者論批判は、若い世代の「変化」はとりあえず措いて、通俗的な青少年言説がどのように間違っているのか、それが政策にどのような悪影響を及ぼしているのかを批判してきた。若い世代の「変化」を至上命題とする 若者論に慣れ親しんできた論者にとっては、若い世代の「変化」をとりあえず措いておく若者論批判に違和感を覚えるのだろう。

甲山某に戻ると、彼は明らかに、1990年代より行われてきた若者の「変化」、そして「劣化」言説を自らの拠り所にして、ヒロイズムに浸っている論客と言うことができる。彼にとっては、劣化言説の時代に主に左派によって行われてきた、階層化している若い世代を社会に対する「加害者」と捉え、自らの教えている学生はその表出ないし尖兵であり、それをケアすることによって社会を改善することができる、と考えているのだろう。そして若い世代、特に甲山某が「下」の階層と見なしている若い世代を擁護している(と勝手に認識している)、後藤和智(を代表とする劣化言説批判者)もまた社会に対する「加害者」である、というロジックと考えられる。

このような甲山某の認識は、ひとり甲山の個人 的資質に帰するべきものではなく(まあ個人的資質もものすごく大きいとは思うけど)、我が国の2000年代以降の一部の社会学が抱えてきた宿痾であるとも考えた方がいいだろう。

ちなみに私が過去に甲山某に言及してきたのは以下の通り。

ameblo.jp

ameblo.jp

ameblo.jp

ameblo.jp

また甲山某がいかに不誠実な論客であるかについてはこちらも参照されたい。

togetter.com

togetter.com

逆襲のしんかいちゃん: 甲虫先生との論争について (山川賢一氏)

【リリース】後藤和智事務所OffLine コミックマーケット89参加情報

コミックマーケット89

東京ビッグサイト

2日目(12/30)

西2ホール「け」ブロック08a

後藤和智事務所OffLine

Webカタログ:https://webcatalog.circle.ms/Circle/12300205

f:id:kgotolibrary:20151222170042j:plain

f:id:kgotolibrary:20151222170057j:plain

・新刊

コミックマーケット89新刊

古明地こいしと不思議な数字の世界――市民のための数理モデリングの基礎

表紙:杏飴(こいんとす/2日目西「ね」13b)

こいしとこころに共通の話題を持たせるために、魔理沙が持ってきた魔道書から飛び出してくる講師が数理モデリングの様々なトピックを解説します。時系列解析(アリス、パチュリー)、最適化(幽々子)、確率モデル(ヘカーティア)を解説。R言語を使いながら進行する、世界を記述する数学を学ぶ〈講座系二次創作〉。

 

第21回文学フリマ東京新刊

世代論メディアを解体する:計量テキスト分析による『AERA』世代論記事の解体――平成日本若者論史13

世代論をひとつのコンテンツとするメディアは、それぞれの世代をどのように扱っているのか。『AERA』を1つのケースとし、2001~2014年の世代論系の記事108本をKH Coderを使って分析します。

 

第2回博麗神社秋季例大祭新刊

八雲紫の社会構築主義幻想――市民のための社会構築主義理論の基礎

表紙:donjuan(シャレコーベ草原)

紫の霊夢に対する不思議な問いかけから始まる、「社会問題の社会学」の講座。基本書である『社会問題の構築』の解説から青少年問題への適用にまで、社会学は社会問題にいかにして向き合うかを解説する、「社会問題の社会学」の解説書。社会構築主義のリアリティを呼び起こす東方の〈講座系二次創作〉です。

 

・既刊

天龍の空間統計学攻略作戦――市民のための空間統計学の基礎

表紙:悠飛あるふぁ(Lucky Chance!/3日目「テ」ブロック41a)

この頃活躍できていないことを嘆く天龍は、夕張の提案で空間をデータで捉える技術、空間統計学を学ぶ。空間統計学の基礎からクリギング、そしてR言語を解説する、艦これの〈講座系二次創作〉です。

 

検証・格差論:2000年代の若年労働・経済言説を読み解く――平成日本若者論史Special2

2000年代、「格差」を語った多くの言説が流れていった。それらの言説はどのような位相を持ち、どのような問題点があったのか。2009~2013年に『POSSE』誌にて連載されていた記事を中心に、電子書籍やサークルペーパーなどを収録した「格差」論の記録です。

【C89新刊】古明地こいしと不思議な数字の世界――市民のための数理モデリングの基礎

【書誌データ】
 書名:古明地こいしと不思議な数字の世界――市民のための数理モデリングの基礎
 発行日:2015(平成27)年12月30日(コミックマーケット89)
 著者:後藤和智後藤和智事務所OffLine http://www45.atwiki.jp/kazugoto/
 表紙:杏飴(こいんとす http://coinstoss.blog.fc2.com/

 サイズ:A5
 ページ数:72ページ
 価格:即売会…800円、書店…1,000円(税抜)
 通販取扱:メロンブックス https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=146208

  とらのあな http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/36/88/040030368839.html

  COMIC ZIN 委託予定

 国立国会図書館登録情報:納本予定
 電子書籍メロンブックスDL(予定)
 サンプル:

www.pixiv.net

 備考:本書は同人サークル「上海アリス幻樂団」の作品「東方Project」シリーズの二次創作作品となります。そのためコミティアなどの二次創作作品の頒布が禁止されている即売会では頒布いたしません。
 登場人物:古明地こいし、秦こころ、霧雨魔理沙アリス・マーガトロイドパチュリー・ノーレッジ西行寺幽々子、ヘカーティア・ラピスラズリ古明地さとり

 【目次】

まえがき

第1章 時系列解析
 1.1 はじめに――時系列データとは
 1.2 時系列データの解析の基礎
 1.3 時系列モデルの考え方
 1.4 ARモデルとMAモデル
  1.4.1 ARモデル
  1.4.2 MAモデル、ARMAモデル
  1.4.3 ARCHモデル、GARCHモデル
 1.5 実際の時系列解析

第2章 最適化
 2.1 はじめに――最適化とはなにか
 2.2 ファイブ・ステップ法
 2.3 感度分析
 2.4 多変量の最適化とラグランジュ乗数
 2.5 遺伝的アルゴリズム
  2.5.1 遺伝的アルゴリズムの基礎
  2.5.2 遺伝子によるデータの記述と第1世代の生成
  2.5.3 適者生存
  2.5.4 交配
  2.5.5 突然変異
 2.6 遺伝的アルゴリズムの利点と問題点
 2.7 遺伝的アルゴリズムのRでのプログラミング

第3章 確率モデル
 3.1 確率モデルのために――行列の入門
 3.2 遷移確率行列
 3.3 行列の対角化と収束

第4章 付録

エピローグ/あとがき
 エピローグ
 参考文献
 あとがき

【ツイート転載】〈若者〉を再定義しよう(H27.12.1)

某御用若者氏が本当の御用になるのを見るにつけ、いい加減〈若者〉の定義をある程度違った形で定義した方がいいんじゃないかなぁ…って気になる。「若者代表」の胡散臭さは、特に左派を中心に多くの人が感づいているところではあると思うけど、それを理論化する必要がある。

ちなみに新たに提案したい〈若者〉の定義とは、

1. それまでの社会のマジョリティ層が持っている(た)ものとは違う考え方や行動様式を持っているとされている社会集団。

2. その「違い」を説明する最大の要素が年代・世代だと思われていること。

そして、それが特定の人や集団、メディアの目的に沿って消費される〈若者〉が、その人、集団、メディアにとっての〈御用若者〉ということになる。もちろん一番問題のある〈御用若者〉の使い手は政府だけど、〈御用若者〉を生み出すのは政府には限らない。

このような〈御用若者〉のあり方は、メディアにとってアイデンティティが消費財になっているという状況と密接に繋がっている。今の若者論、世代論は自分と は違う〈他者〉のアイデンティティを消費することによって成立しているのだが、一部のメディアにおいてはそこで提示された世代の「違い」が社会を読み解くキーとして認識されている。ただこのような世代のあり方は、むしろ若者論者が勝手に作っている可能性のほうが高いのではないか。

劣化言説の時代以降、若い世代がいかに既存の社会を構成している世代とは「違っている」かという言説が生み出され、そして若い世代の論客もまたそれに呼応する形で「自分たちの世代はこんなに特殊な考え方を持っており、特殊な生き方を志向している」と主張してきた。そういう世代論ばかりが受けてしまう状況というのは、やはり考え直す必要があるのではないかと思う。

ついでに言うと、今、原田曜平をはじめとするマーケッターの世代論が受けているのは、若い世代を「自分たちとは違う」世代として切り離し、安全圏から消費 したいという社会の欲望からではないかと思う。彼や少し前の三浦展などのように、今の若い世代が「こんなにも自分たちと違う」ということを商品として売り出してきた論客の言説は、ヘイトスピーチやバッシングの原動力になる可能性が大きい。疑問に思う向きは、そもそもある種の俗流若者擁護論として生み出された「草食系男子」論(by 深澤真紀)が見事に若者叩きの言葉となったことを思い出してみよ。

www.melonbooks.com

www.melonbooks.com